ユーザの皆様へのOSDN株式会社の設立についてのご説明

既にプレスリリースで発 表されている通り、この度、Slashdot Japan、SourceForge.jp、Open Tech Pressの3サイトを運営しているOSDNは、9月1日をもって運営元がVA Linux Systems Japan株式会社のOSDN事業部から事業を分離し、OSDN株式会社として新たなスタートを切りました。

今回のOSDN事業の分離、独立により、OSDNの全サイトのサービス運営上への影響は 特にありません。VA Linux社OSDN事業部の全資産が、円滑に新会社であるOSDN株式会社 へと引き継がれております。 また、VA Linux社において私(佐渡)の配下でOSDN事業部に所属していた メンバーは、3名全員が新会社へ転籍となっており、定常的なサポートの中断等の 技術的な問題も発生しないと考えております。

■事業部分離への経緯

OSDNの歴史は、2001年5月にSlashdot Japanを立ち上げた時点から始まりますが、 VA Linux社におけるOSDN運営の主目的は、日本におけるオープンソース・ソフトウェア の開発者を中心とした様々なコミュニティらの活動の基盤整備を行うことで、 オープンソース的な文化の定着と発展を促し、結果的にVA Linux社が依存する オープンソース市場の拡大を図るというものでした。

しかしながら、現在に至るここ数年においては、VA Linux社はLinuxカーネルを中心と したソフトウェアテクノロジーを基盤とする事業において、日本国内においては 揺るぎない存在感を発揮する状況になってきており、OSDNを自ら運営する必要が必ずしもなく、 さらにソフトウェアソリューションの事業に集中し、拡大、成長させようというフェーズにありました。

一方、OSDNは、順調に規模の拡大を続け、開始当初はVA Linux社の大きな支援と全スタッフが 他業務との兼任という体制によって何とか運営できていたものが、現在では数名の 常勤スタッフをおけるまでに成長しております。

この状況下において、1年半ほど前となる昨年春に、VA Linux社の上田哲也社長と私の間で OSDNの分離案を含めた将来についての話し合いを開始し、OSDNの更なる成長、発展のためには VA Linux社と法人として分離している方がより望ましいこと、ならびに、OSDNの成長によって オープンソース・ソフトウェアの開発の促進とコミュニティの更なる成長が促されることは、 OSDNが外部にいようが関係なく、VA Linux社にとっても望ましいことである、 というコンセンサスが取れました。その後、様々な分離手法の検討と、何社かの企業との 話し合いも開始し、OSDNの安定した持続的発展を目指すという名目のもとで、 今年の春にはサンブリッジ社をパートナーとすることが現状ではベストで あるという結論を出し、今日に至るものです。

■OSDNの方向性

OSDN株式会社は、今回の事業分離により、いったん株式会社サンブリッジの100%子会社と なっております。大きな情勢の変化があれば、この資本関係は変化する可能性がありますが、 現状ではまずサンブリッジ社の傘下のもとで、OSDN株式会社をごく普通の会社組織として 形作ることを何よりも専念したいと考えております。特に今回の分離で転籍してきた社員は、 3名とも前線の生産部隊でありますので、まず企業としての形を作る人材の確保が第一となります。

今回の分離で、サンブリッジというベンチャーキャピタル資本の傘下に入ったことになるわけですが、 少なくとも数年は急激な成長よりも、まず安定的な収益基盤を形成することを目指します。 よって、OSDNの収益基盤を確保するために、既存の3サイトについては、より強力なサイトへ 成長させることには力を惜しみません。ただ、OSDNのメディアとしての価値は、現在の ユーザの皆様の存在そのものであり、慌てず、急がず、変化によってユーザが大切だと 感じている何かを失わないように心がけていく所存です。

■Slashdotユーザの皆様へ

Slashdotにおいては、今回の分離を契機としても、あまり目に見える変化は起きないかも しれません。ボランティアを含めて関わっている人も変わりませんし、ネタはタレコミ 次第ということもありますので。 ただ、今までよりは、機能追加および改善、バグ修正、性能向上がより進む ことは確実だと思います。少なくとも近いうちには、検索(search.pl)の改善はなされると思います。 その後はちょっとまだ見通しが立ちませんが、もう少しOSDNの技術陣(2名しかいませんが)の余裕ができてくると、計画が立つかと思います。(誰かいませんか…。)

編集面においては、我々OSDNとしては、現在のSlashdotの何とも形容しがたい空気を 大事にしたいと考えていますので、今のタイミングでサイトに対して何らかの変化を起こす ことは全く頭の中にありません。ただ、今回の分離における事務作業で、 私個人としては編集をさぼらざるを得ない状況になっており、以前はほとんどのストーリー掲載 に関わっていた編集リーダーのOliver氏が定常的活動が難しい状況であることも踏まえ、いろいろと限界が見えた気がします。よって、今後については、 うまく現在のボランティア編集者陣とも協力して、フレッシュなストーリーがどんどんと出てくる体制に少しずつ変えていければと考えています。

ユーザの皆様へのお願いとしては、「もっとタレコミ、もっとコメント」という、いつも 通りのことだけです。我々OSDNは、ユーザの皆様のタレコミ、コメントに支えられていることを 肝に命じて、運営を支えていく所存です。

■オープンソース開発者およびSourceForgeユーザの皆様へ

自分でオープンソースのコードを持っている、または開発しようとしている方は、 どんどんSourceForge.jpを使ってみてください。SourceForge.jpにコードが集まり、 ユーザが増えることで、SourceForgeシステムの改善がやりやすくなります。

SourceForge.jpでは、様々な機能を提供していますが、個々の機能は非常に貧弱な ものもありますし、各機能の連携といった部分も実に不十分だと我々自身も認識しています。 OSDNでは、1年程度はこのあたりの強化に力を入れ、可能であれば新機能の追加も 検討したいと考えております。

また、SourceForge.jpは、ソフトウェアダウンロードやcvs/svnといった通常の Webサービスとは異なり、非常に大きく、コストがかかるインフラリソースが必要と なります。そのため、我々は広告販売だけでなく、ダウンロードミラーといった支援も 常時受け付けておりますので、支援が可能な組織があれば、ご助力を賜りたいと考えております。

OSDNは営利企業ではありますが、SourceForgeは公共的な側面を持つサイトであることを 踏まえ、永続的かつ安定的に発展させていくことに力を惜しみませんので、皆様の 一片のコードからの助力を頂ければ幸いです。

最後となりますが、今後とも皆様のご期待に沿えますよう、OSDNの社員一同精一杯努力していく所存でございますので、なお一層のご支援とご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。

2007年9月3日
OSDN株式会社
代表取締役社長 佐渡 秀治